MEMOLOG*プチお遊び企画SS

「ジャンケンポン!!」(日番谷・夏梨・乱菊)


※夏梨が普通に死神です。


「ジャンケンポン!!」
「アホやってねえで仕事やれ松本」
「えー! 隊長ジャンケンやってくださいよーたかがジャンケンなのに」
「負けたら王様ゲーム参加なんて、誰がそんな不利益しかねえジャンケンするか」
 十番隊・隊首室。そこで行われている端から見れば不毛なやりとりを、しかし夏梨は真顔で見守っていた。
 隊では普段、いつもサボりがちな副隊長不在時に頼れる第三席、という立場にいる夏梨だが、今ばかりは乱菊の味方だった。
「もー! せっかく夏梨まで無理やり巻き込んだのに、隊長が参加してくれなかったら楽しみ半減じゃないですか!」
 乱菊が不満そうにするのに、日番谷は少し意外そうに乱菊の後ろの夏梨を見る。
「……お前も参加するのか」
「そうだよ、ジャンケン負けた」
「……」
「だから、あんたも参加しろ」
 真顔を貫いて言うと、日番谷は寄った眉をさらにひそめて、何でそうなる、と返す。
 夏梨は席に座っている日番谷の前に仁王立ちして、己より格上の隊長を見下ろす形で言い放った。
「あんな参加して恥しかかかないゲームに参加するんだよ、それなりに見応えなきゃ割に合わない」
「俺は見世物か!」
「心配しないでいいよ、そういう理由で朽木隊長も参加させられてるから」
「余計に御免被る」
「……つべこべ言ってないで男なら参加しろよ!」
「絶対に嫌だ!」
 余計頑なになって拒否する日番谷に、夏梨と乱菊は顔を見合わせて眉をひそめる。
「じゃあせめてジャンケンしてくださいよぅ。勝てばいいんですから簡単じゃないですか」
「負ける確率がある以上、やること自体が損だ」
「冬獅郎のいくじなし」
「なんとでも言え。とにかく俺はやらない」
 しっかりと言い切って視線を書類に戻した日番谷を見て、夏梨はわざとらしくため息をついた。そして低く「わかった」と呟く。
「じゃあ、最終手段取らせて貰うよ」
「好きにしろ。だが俺はジャンケンに負けない限り参加しない。そしてジャンケンもしない。これでどうする気だ」
「――こうする」
 夏梨はそう言うや、右手を勢いよく振り上げる。そして仕掛けた。

「出さなきゃ負けよ、ジャンケンポン!!」

 しばしの無音と沈黙。
 ぽかんとした顔の日番谷と乱菊が見つめる中で、夏梨は不戦勝となったチョキの右手を、日番谷に突き付けた。そしてたちの悪い笑みで、にっこり笑う。
「出さなかったから、冬獅郎の負けな」

 ――史上最年少で隊長に就任した天才少年は、このとき久方ぶりの完敗を喫した。


[2010.03.23 初出 高宮圭]